7月26日(日)から31日(金)の日程でKarlsruhe, Germanyにて開催されたICM2009 (The 18th International Conference on Magnetism)に参加しました。前回2006年、京都での会議に引き続き2回目です。第1回開催が1958年。3年毎の開催ですが、長い歴史の会議です。Frankfurt空港(Flughafen Fernbf.)から乗り換え無しのICEで1時間程度。1回乗り換えてもMannheim Hbf.の同じプラットホームで次のICEを10分ほど待てば良く、前回のUlmよりも空港からより便利な場所にあるので、移動に関して気分的にも非常に楽でした。いい加減なヨーロッパの鉄道にあって、時間に正確なDeutsche Bahnは本当に素晴らしい(何でもかんでも、すぐストライキのフランスは論外です)。ICMはバリバリの磁性体材料に関する国際会議で、半導体スピントロニクス云々よりも従来の金属系材料が主流ですので、特に半導体材料屋としてはある意味素人。かなり門外漢という立場でしたが、これも勉強です。3名のノーベル物理学賞受賞者Phillip W. Anderson、Albert Fert、Peter Grünbergのご講演も拝聴できましたし、前回同様あまり注目されない私のPoster発表では、受賞記念のPlenary Sessionで今回ご講演され、Racetrack Memory等で有名なIBMのDr. Stuart S. P. Parkinが熱心に質問して下さいましたので、この点では大変有意義でした(どの講演でも「Wow, Great!! Wonderful!!」を連発する、調子いい感じの方ですが・・・興味がなければそれこそ「無視」でしょうから、まぁいいか)。また予定通りProf. Dr. Peter J. Klarと会場で待ち合わせ、半日ほどディスカッションすることもできましたので、これだけで今回の目的を達した感すらありました。Karlsruheは会期を通じて(夜中に何度かにわか雨がありましたが)概ねカラッと晴れ、しかも朝晩は寒いくらい涼しく、とても快適でした。ただPeter曰く「Karlsruheの夏は通常とても蒸し暑くて、昔アフリカ出兵の際には、ドイツ軍兵士の訓練に使われたほど。この天候はmiracleだ。」とのことでした。会議全体の印象として、我々が通常参加する国際会議と違いOrganizeされているようでされていない、やはり若干「うっとうしい」会議でした・・・前回は京都、日本開催だったので、それを感じさせなかったのでしょうか?そもそもPoster Sessionの項目に「Pins can be used to fix the poster on the board. Pins are NOT provided by the organizers.」とあって、まず驚きました・・・(参加者がピンを準備しろってこと?)。初日のPlenary Sessionの会場では音が反響して登壇者の声が全く聞き取れないし(随分経って、スピーカからの聞こえ方が改善されましたが)、無線LANは繋がりにくく遅いし途中で切れるし、夜のPoster Sessionで出るビール等のBeverage類はたった2杯までしか飲めないし、昼休みを中心に会議場で参加者に販売されているSandwichやBeverage類はKarlsruhe Hbf.で買うよりも1 Euro以上も高い3 Euroで、(高額の登録料を払っている参加者に格安で販売するならまだしも)ある意味「ぼったくり」だし・・・一体どこにお金を注ぎ込んでいるのやら・・・という感じでした。その販売方法もうっとうしかった・・・我々は「金券」を別の場所で買わされ、販売員はそれしか受け付けないのですが(ここで余分なコストが掛かっている気もしますが、インフルエンザ対策?その方法自体はいいんです!)、売り場は広い会議場のあちらこちらに沢山散らばっているのに、肝心の金券販売所が1階と屋外のたった2ヶ所。ちょっと飲み物を、と思い立っても「あっち(遠くの金券販売所)で金券買って来い」って・・・。Oral SessionではChair Personが来ないこともしばしば。Poster Sessionではボードの前に発表者がいないだけならまだしも、何を勘違いしているのか「Help yourself !」などと堂々と貼って全然現れない輩や、Posterすら貼られていないボードが非常に多く、一体どうなっているのでしょうか・・・Organizersはきちんと調べてペナルティを科すべきだと思います。こんないい加減な感じで、毎回この会議は行われてきたのでしょうか・・・全体として「行き届かない」全くこの一言に尽きます。
またICM2009前の週、7月19日(日)から24日(金)の日程で神戸にて開催されたMSS-14 (The 14th International Conference on Modulated Semiconductor Structures)に参加しました。私自身で発表を行った訳ではないのですが、初めての会議でしたのでぜひ聴講したいと思い、せっかくの日本開催の今回参加してみました。EP2DS-18 (The 18th International Conference on Electronic Properties of Two-Dimensional Systems)とのJoint開催でしたので、さらに2度お得。半導体ナノワイヤ関連等、興味深い発表がいくつかありましたが、上記ICM2009出張の直前ということもありましたし、如何せん一気に具体化しそうなProf. Dr. Peter J. Klarとの共同研究プロジェクト関係の別件で会期中も忙しく、なんだか大変でした。加えて神戸の暑さと湿気と来たら・・・会期の半分しか参加できませんでしたが、その間ずっと不安定な空模様が続き、雷雨もしばしば。この点Karlsruheはある意味天国でした。慣れているせいかドイツではストレスを感じることも無く、直前までの忙しさのいい骨休めができた感じです。
形状異方性MnAs NCsに関して3月中旬Appl. Phys. Lett.に投稿した論文が、ようやく6月初旬にAccepted、その後6月中旬にOn-Line掲載されましたので、Publication Listsを更新しました。査読に対する修正や、図面・文章に対するEditorからの修正に通常より時間を要してしまいましたが、そこからは非常に早かった。以前出したものに続きOverall RatingはVery Goodでしたので、一先ず「よかった、よかった」という感じです。また我々の一連の研究成果を発展させてProf. Dr. Peter J. Klarとの間の共同研究をさらに進めるに当たり、プロジェクト公募にきちんと申請することにしました。約1ヶ月後の応募締め切りに向けその準備で急に忙しくなってきましたが、非常にチャレンジングなプロジェクトでかつ比較的大型の予算であるだけに、過度の期待をしないよう肩の力を抜いて、魅力的な提案が出来れば良いかなと思います。色々な意味で「その後」につながる申請内容であることも重要です。
6月7日(日)から10日(水)の日程でUlm, Germanyにて開催されたEW-MOVPE-XIII (The 13th European Workshop on Metal-Organic Vapor Phase Epitaxy)に参加しました。UlmはDonau河畔のとても雰囲気の良い町で、突然のスコールや小雨がパラつくこともありましたが、基本的にカラッとした過ごしやすい天候で快適でした。そのため余計に、帰国した際の成田空港の湿気には「うんざり」といった感じです。欧州会議とは言え毎回比較的多数の日本人が参加することが常でしたが、不思議なことに今回、我々2名を含め3名のみの参加だったので若干驚きました。場所がちょっと「地味」だったのでしょうか?半導体ナノワイヤをはじめ、Si上の化合物半導体成長、半導体スピントロニクスに関する報告も今回は比較的多数ありましたので、それなりに楽しむことが出来ました。Lund University (Sweden)・Knut Deppert先生もいらっしゃいましたし、Lundから半導体ナノワイヤ関連の発表もいくつかありました。半導体ナノワイヤについては、すぐに試してみたい興味深いヒント(アイディア)を得ることができましたので、帰国後早速実験を計画しました。またWolfgang Stolz先生とも久しぶりにお話しすることができ、私の研究成果についても議論頂きましたので、とても有意義でした。ただ以前も書きましたが、半導体スピントロニクスに関して相変わらず動機・目的が全く不明(瞭)な「漠然とした」物性研究がいくつかなされ、それらがコミュニティ内ではある程度の「市民権」を得ていることに、やはり「政治」を感じざるを得ませんでした。「電荷とスピンを利用したスピントロニクスデバイスに有望」って、具体的には何をターゲットに、それを実際にどのように実現するつもりなのか・・・非常に疑問です。BackgroundとPurposeが書かれていない(あるいは、漠然過ぎる)発表って、どう考えてもおかしいでしょう・・・。ドイツ出発の1週間前にようやく、ほんの僅か薬局に入荷された「ウィルス用マスク」を入手することができました。そのとき本当に必要な他の人のことを考えない身勝手な行為「買い占め」は良くない。今回必要な分、1袋だけ購入しました。しかしいざ成田空港・ドイツに来てみると、実際にマスクなどしている人はほぼ皆無。札幌からの成田便の機内では、成田空港に着陸するやいなや皆一斉にマスクを着用し始めた光景には正直「ドン引き」しました・・・札幌を発つ時には誰一人としてマスクなどしていなかったのに・・・ある意味、滑稽ですらありました(この時クラスJ席でマスクをしなかったのは私だけ・・・その他は全員って・・・苦笑いです)。空港職員を含め、成田空港ビル内でもマスクをしている人は既に極めて少数派(入国審査官および検疫官のごく一部のみ)でしたから、いかに札幌市民の勘違い・誤ったイメージ・情報の遅れがひどいか、というところでしょう。成田空港で感染拡大中などという事実は、これまで聞いたこともありません。国際線の客室乗務員に対するマスク着用指示も既に1ヶ月以上も前に解除されていましたし、Frankfurt便の機内でマスクをしていた乗客もさすがに居心地が悪いのか、マスクを着けたり外したり、口だけ隠して鼻は出している等々・・・マスクの意味を考えない日本人がたくさんいて、ちょっと滑稽でした。Frankfurt空港で検疫の「かけら」もありませんでしたし、言わずもがなICE車内・Ulm市内でも誰一人マスクなどしていません・・・皆、日常の対応をしていました。もちろんウィルスの潜伏期間を考慮して、帰国後職場で人と接する際にマスク着用の指示が出されている場合もあり、そういった取り決めにはきちんと対応すべきと思いますが、無意味で過剰な行為は逆に周囲に誤ったメッセージを送ることになるので、慎むべきだと思います。個々人が冷静に正確な情報を入手するよう努力が必要でしょう。会議には8名のアメリカ人が出席しており、入国時成田空港の検疫を通る際、この「アメリカ人との接触」が実際どのように扱われるのかちょっとだけドキドキしましたが、一応何事もなく通過することができました(検疫官から、「はい」にチェックですかぁ・・・アメリカのどの地域から来た人でしたか?などと質問され、下手するとこれだけで「濃厚接触者」にされそうな勢いでしたが・・・)。帰国から7日間の経過観察の指示がありましたが、ドイツ滞在中も含め体調はすこぶる快調です。